この記事は「遊覧飛行が創る空の新しい価値|「移動」から「楽しむ」へ」の後編になります。
まだ前編をご覧いただいていない方は、下記リンクよりご覧いただけますと幸いです。
遊覧飛行が創る空の新しい価値|「移動」から「楽しむ」へ(前編)
ではどのような切り口で遊覧飛行のような「エンタメ領域」な事業を展開していけば良いのか。
大手航空会社(ANA、JAL)はやはり現在同様、ファーストやビジネスクラスを備えた国際線機材を利用して、よりラグジュアリーな機内空間を提供することで、これまで国際線に乗る機会がなかったお客様にも喜んでいただけるのではないかと思います。
「移動」の領域では近年、B737やA320のような中型機がスタンダードになっている中で、世界的に運行数が減少傾向あるB747(ジャンボ)やB777(トリプル)などの大型機は、乗る機会が今後なくなってしまう可能性があります。
なので、大型機材は「エンタメ領域」へ投入することで、飛行機好きの方にとっては大きな機体でフライトを楽しむことができますし、またそれらを持たない中小の航空会社への差別化となるはずです。
では中小の航空会社はどのように大手に対抗するのか?
それは本拠地となる空港や就航地域のアピールとなるようなサービスを行うことで、大手と差別化を図ることができます。
日本のリージョナルエアライン(地域間航空会社)と呼ばれるフジドリームエアラインズ(FDA)やソラシドエアはそれぞれ静岡空港・名古屋小牧空港、宮崎空港を本拠地とし、地方空港を結んでいます。
現在のフライト(移動領域)でも地域色のある機内サービスを行っていますが、
それらを全面的に押し出した地域密着型のサービスを行うことができます。
例えばその地の特産物を使った機内食を提供したり、有名な観光地を空から眺めることができたりなど、地方創生の役割も果たすことができるはずです。
話が少し脱線してしまいますが、他の交通機関を運行する企業では「移動」から「楽しむ」へ事業拡大した事例があります。
それは2013年に運行開始したJR九州の日本初となるクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」です。
スイートクラスになれば100万近くの価格ながらも、開始から7年が経った現在でも、爆発的な人気で空きがなく、予約は争奪戦となるようです。
「鉄道があまり好きではない」という唐池会長(当時社長)が多くの人に列車に乗ってもらうために、「それなら、自分が乗りたい夢の列車をつくればいい」という発想から生まれたサービスです。
実際に乗車したお客様はもちろんのこと、提供するスタッフまでも楽しんでいるとのことで、これほど素晴らしいサービスの形はないでしょう。
航空会社にとっても、今後活かせる事例だと思います。
航空による「エンタメ領域」が今後広がっていけば、もっといろんなイベントを行うことができます。
過去には、スターフライヤーがアイプリモ(プリモ・ジャパン社)と共同で「11.22❤いい夫婦の日 Happy Sunrise Flight(2015年)」やFDAが「天空の結婚式 ウエディングフライト(2019年)」などの企画フライトの実績があります。
もちろん安全上の制限はありますが、地上と同じように空もひとつの「空間」として捉え、特別な瞬間を空という舞台で行うことで、より思い出深いイベントとなるはずです。
技術開発により、運航コストが下がれば、もしかしたら個人や団体での利用(空の結婚式や音楽イベント)なども実施できるかもしれません。
また今の飛行機の構造は、移動に適した仕様になっているはずです。
飛行機が「エンタメ領域」で、さまざまなシーンで利用されれば、それに適した構造の機体も生まれるかもしれません。
例えば、飛行機の内装を変えて機内の空間を広げたり、窓を広げてもっと空が見えるようにすれば、より空の景色も楽しむことができるでしょう。
今回も前編から引き続き「遊覧飛行が創る空の新しい価値|「移動」から「楽しむ」へ」というテーマでお話してきました。
私自身、最近は年に3,4回ほど飛行機になる機会がありますが、飛行中の窓越しに広がる空には、いつも感動させられます。
飛行機好きにとっては、今よりももっと「空を飛ぶことの楽しみ」が増え、多くの人にそれを感じてほしいと願っています。
コロナ下の状況で航空会社はかなり厳しい状況に立たされていますが、むしろ新しい価値を利用者に提供できるチャンスなのではないでしょうか。